茂木健一郎に会ってきた。

日曜日。名古屋大学豊田講堂にて。主催はPHP出版。『ひらめきの導火線 トヨタとノーベル賞』出版記念公園を、今年のノーベル賞受賞者の母校である名古屋大学の、トヨタが金出して改装したばかりの豊田講堂にて行っているわけだ。

早めに行った特権で、あとで著書にサインしてもらえた。握手もしたけど握力が強い人だ。
以下メモ。

メインの話題
・「日本人には独創性がない」なんてのはウソ。脳科学的には、日常のひらめきもノーベル賞のひらめきも同一。
・「知」は「多様性」である。というか、そもそもCreativityを「独りで創る」「独創性」と訳すのがおかしい。Creationは独りよがりでなく、多くの人がパス回しをしてやるもんなんだ。たまたまシュートした人がノーベル賞ってだけでさ。まあ、ワトソンやクリックみたく、「正しい時に正しい場所に」ってのも大事だけど。

・だって「シンポジウム」は「共に飲む」って意味なんだぜ。

・日本には、みんなで意見を出し合っていいものを作ろうという古きよき伝統があった。万葉集なんか、天皇から無名の防人の歌まで入ってる。

・ただ、日本人は組織にとらわれすぎ。そんなんじゃアウェーで闘えないし。専門バカってのは、ちょっとね。ノーベル賞受賞者専門馬鹿はいないよの。

・でさ、日本の大学ってのも専門バカ養成機関になってんじゃないの?

・てか、簡単なことがいいことだとか思うんじゃねえよ。難しい事にこそ本質があるんだよ。

・総合的知性、あるいはブリコラージュ(L・ストロース)。知性ってのは、いつ、どこで役立つのかワカンネーんだよ。そこに歴史を学ぶ意義がある。

・名古屋といえば、家康は偉かった。自分がウンコ漏らした絵を描かせたんだから。

トヨタ式生産システムってのも凄いよね。思いついたことをA4一枚にまとめて出させる。DNA二重螺旋もA4一枚だった。

・ちなみに、その提案書への報酬は、5000円から多くても10万円。ヒルズ族に言わせれば、印紙代にもなんねーけど、10万円もらえればみんなで飲みにいけますよね、とかいってたトヨタ社員の顔はなんと綺麗なことか!って、俺はサンボマスターじゃねえよ!

Googleのシュミットだって、「1人の天才より30人の凡才がいた方がいいものできる」っていってんじゃん。

・そもそも、アメリカ人も日本人もヨーロッパ人も、根っこの部分ではやってること同じなんだよね。ただ上に乗せるストーリーが違うってだけでさ。
あそこは一神教だから、だれかが一人でバリバリ作った、ってのが好きなのよ。ヒーローが。スティーブ・ジョブズとか、詩人で言えばポエット・ローリエ制度とか。スティーブはプレゼンは上手いけど、一人でiPod作ったってのはウソだよね。フィクション。
日本はみんなでやってたんだよね。万葉集とか。トヨタだって、私がプリウスの生みの親だ、って人、いないっしょ。今はこの文化、廃れかけてないかい?

その他
ケンブリッジには、数学者が議論できるよう、トイレを含む至る所に黒板があるのだが、トイレの黒板に「私は、(フェルマーの最終定理を解いた)ワイルズの証明に致命的な欠陥を発見したが、このトイレの黒板は、それを書くには小さすぎる・・・」とかあったりして。

・女性は、化粧をすることで化けている。女性が化粧をした後の自分の顔を見る時に動く脳領域は、他人の顔を見るときに動く脳領域。
自分の理論を他人の理論のように見ることができるのが科学なんだ。○○先生が言ったから、というのが通るようではおかすぃ。

・水に「愛してる」って言ったら伝わるなんて、自分の感性が必ず相手に伝わって、それが相手を感化できるなんて、それはファシズムで自己チューっすよ。

・他人に突っ込まれる前に、自分でつっこめ。

追記
質問したくて手も挙げたけど、3人の枠があったので無理でした。
「私は将来、アメリカのロースクールを出て国際的な法律家として活躍したいのですが、留学もされていてアメリカの学会などで発表しちゃう茂木先生から、国際的に活躍する際のアドバイスを頂きたいのですが云々」って。本人が見る可能性は低いけど、偶有性*1にかける!

*1:この使い方で、よくないか。