『思考の補助線』ほか
茂木健一郎の講演で、彼自身この本を「アンチ知のデフレ本」的に表現していたので興味を惹かれて購入。出版(物)とは、publishとpublicの関連性からも分かるように、広く大衆に向けて発するという意味をも含むと解されるところ、この本は、主として著者の決意表明であり、内面の闘いの記録であり、多分に愚痴でもある。この本の名宛人は我々ではない。少なくとも我々の大部分は、世界のすべてを引き受ける覚悟を持てるほど、知的にタフではない。本書の名宛人は、先に書いたところから明らかなように著者自身なのである*1。
ただ、名宛人が我々でないからといって、全く役に立たないわけではない。この本は、思考について良質な触媒である。育てるべき「種」にはならないが、「肥やし」にはなる。その意味で、なんとなくウ●コに似ている*2。
「出る杭」思考がないのなら、俺が出る杭になってやるさ。とはいうものの、「出る杭」には大きく2種類ある、と最近考えている。白黒はっきり分かれた区別ではないが、「数値的に出る杭」と「方向的に出る杭」である。「数値的に出る杭」とは、既存のシステム・既存のレールに乗りつつも、一般人から頭一つ抜き出てその分野の最先端を突っ走る人のことであり、いわゆる超優秀な人、ということになるだろうか。あるいはレッドオーシャンのシャンバラを往く者である。「方向的に出る杭」とは、誰もいないブルーオーシャンを突っ切って泳いでいく人であり、梅田望夫の言葉を借りれば「けもの道」を行く人である。アメリカのロースクール行きたいという私の志望は明らかに「出る杭」だが、果たしてそれは数値的なのか方向的なのか、自分でも判断しかねる。と、いうわけで、本書の内容とはあまり関係ない書評になってしまった。仕方ないね。
で、アメリカのロースクールといえば、こんな本も買ってみた。ただ、この本は「LLM」→「N.Y Bar」→「日本のロー」→「国際弁護士!」というルートなので、「JD」→「Bar」→「???」を志向する私向けの本ではなかった。簡単に言うと、この本は「米国ロースクールの1年コース*3への留学のあと、簡単に資格が取れるニューヨークで弁護士資格とって、そのハクでもって日本のローに入れば、うまく行けば国際弁護士、日本の司法試験落ちても米国免許があれば大丈夫!ポートフォリオ的に安全だよ!」ということを言っているのであって、ホンマモンのアメリカのロースクール教育であるJD*4についてほとんど語ってない。けしからん。JDコースのシビアさについては『リーガル・エリートたちの挑戦―コロンビア・ロースクールに学んで』を参照のこと。この試練を超えた日本人が増えれば、きっと日本は変わる。