このブログについて

趣旨
「新しい世界への希求」のコンセプトのもとに、毎週日曜日、その週に読んだ本の紹介と、英語勉強の成果を書いていくブログです。多分。


管理人について
「kousuke-i」ではてなIDを取っています。
1987年11月生まれ、現在20歳の大学3年生(男)です。法学部所属。
最近までココにブログ書いてましたが、心機一転ということではてなダイアリーに引っ越してきました。


コメント・トラバ
大歓迎です。
健全な議論は、議論の参加者のためにもなりますし、アウトプットへの反応もブログの醍醐味だと思っておりますので、どしどし意見をお寄せ下さい。


その他
このエントリは、必要に応じて適宜加筆をしていこうかと思います。

『読書進化論』ほか

新しいブログを始めるという決定をしたことでテンションが上がってしまったのか、少々本を買いすぎた一週間だった。貧乏学生なのに1万以上本を買った計算。


読書というのは、著者から読者への情報伝達であり、情報伝達ということは、それはコミュニケーションであり、コミュニケーションは人と人とをつなぐ。
かつて、この情報伝達は一方通行だったのだが、ネットの登場により(手垢のついた言い回しだなこれも)、著者と読者との双方向でのつながりが可能になった。読者からのフィードバックをバシバシ受け取っていたのが、少し前なら梅田望夫氏であり、現在なら著者や小飼弾氏であったりするのだろう(こちら等参照)。「本」がネットに侵入しているのか、ネットが「本」の世界を侵そうとしているのか、それはわからないが、一本好きとして、読書の未来が楽しみになる本であった。
ただ、少し残念だったのは、本書のターゲットが「本を読む人」+「ちょっと本を読む人」+「本を読まない人」で、それなんて人類全体のMECE集合。まあ興味のない箇所・既知の箇所はサッサと飛ばしてくんでいいですけどさ。


ひらめきの導火線 (PHP新書)

ひらめきの導火線 (PHP新書)

今をときめくキラッ☆な農家学者、じゃなくて脳科学者、茂木健一郎氏の最新巻。
現在、大学の生協で茂木本を買うと、11月2日に名古屋大学の豊田講堂で行われる、この本「ひらめきの導火線 トヨタノーベル賞」の発刊記念講演会の整理券が無料でもらえるので、そっち目当てで買ってしまった、というのもある。
茂木氏が予測していたかどうかは分からないが、この本の発刊後に、日本人3人ノーベル賞を受賞した(南部さんはアメリカ人だろJK)。しかもその全員が、今度講演を行う名古屋大学関係者であり、しかも講演を行う場所が、トヨタが建てた豊田講堂。偶然というか偶有性というかなんというか。
ちなみに、本の内容は、薄いといわざるを得ない。日本企業や日本人的姿勢に対する評価を170ページの新書にまとめるだけでなく、『生物と無生物のあいだ』ばりに、「発明」とは何か、「オリジナリティ」とは何か、というような根源的な位置まで掘り下げて欲しかった。茂木氏にはそういうのを期待してもしすぎではないと思うのだが(忙しいのかもしれんけどさ)。


国語 算数 理科 しごと―子どもと話そう「働くことの意味と価値」

国語 算数 理科 しごと―子どもと話そう「働くことの意味と価値」

小飼弾氏の『弾言』で紹介されていた、(子供向けの?)「しごと」とは何かを問う本。
の、はずだけど、「借金を返したり配当を配ったりする金ができると約束できる場所に『しごと』が生まれて、その約束を守るのが『しごと』なんだ(大意)」って、いや、確かに私も社会人ではないので弾言はできないが、これって、組織体としての「会社」や「事業」の説明であって、個人が行う「しごと」の説明とは違うんではないだろうか。
採算が取れてなくてもできる仕事もあるにはあるだろうし(公務員とか)、そもそも、会計の約束を気にしてない仕事人も多いのではないか。結局、主人公の女の子の、「パパの仕事はなんですか」的な宿題も、あの説明できちんとできたかどうかわからないしね。


数に強くなる (岩波新書)

数に強くなる (岩波新書)

きっかけは、上と同じく『弾言』での紹介と、勝間和代氏が「メニューの値段と回転率、材料の原価、テナント代とか計算すれば、うまい店かどうか分かります(大意)」と言っていたのを受けて、私も数字をバババッとやってみたいなと思ったので。
物体をみたら水だと思って重さを出し、ドンガラ率を乗じて重さを割り出せ、とか、なんでも1人当たり、1日当たりにしてみろ!という発想はなかなか面白い。
ちなみに私は、高校の初期に数学が苦手で、それを計算の遅さのせいにして、計算のショートサーキットを色々と暗記したり、遅さをカバーする工夫をしていた人なので、計算方法の改良などの点で、共感できる部分はかなりある。

『弾言』〜BI制度実現に関する2つの質問

弾言 成功する人生とバランスシートの使い方

弾言 成功する人生とバランスシートの使い方

弾言』ほか、最近色々なところでみかけて、私もそれなりに魅力的な制度だと感じるBI(ベーシック・インカム)制度について、2点ほどでっかい疑問があったので。
BIという制度そのものについては、wikiとか参照。

財源面での疑問

『弾言』p187以下(およびこのエントリ)では、BIのための予算(国民全員に一月5万円で、年72兆円)の財源として、基礎年金・生活保護からの置き換えで13兆円、相続税を100%にすることで得られる金融資産の30〜40兆円/年に相続されるはずだった土地(不動産ではないのだろうか?)を含めた70兆円/年を挙げている。
土地建物で35兆円とかもらって、それをどうやって換金するのか、いざ売ってみたら二束三文だったらどうするのか、という疑問もあるが、そのあたりはよく分からないので置いておくとして、私が問題にしたいのは、相続税を100%にした場合、BI世代2世代目以下でも相続税収入を維持できるのか、ということである。
小飼氏は、相続税を100%にする(国が死者を相続する制度にする)ことで、30〜40兆円の金融資産を、同じく30〜40兆円の土地を、国が相続すると試算しているが、そもそも家族間で相続されていることが多い不動産資産を100%相続税の対称にしたら、土地を持つことへの意欲がそがれ、後者の30〜40兆円というのが、年を経るごとに減っていくのではないか。
具体例を挙げると、Aが持っていた土地が、Aの死後、100%相続税によって国に相続される。となると、Aの子Bは、その土地を相続することができない。Bが新たに土地を入手することがなければ(私なら賃貸にする。不動産は、家族間で長く持ててこそ意味があると思うので)、Bの死後、国家はBからの土地相続を期待できない。相続税が100%であれば、このようなケースはそれほど珍しくなくなるはずだ。
つまり、「土地相続で得られる30〜40兆円」というのは、最初のころこそ現実かもしれないが、いつまで続くかは疑問があるのである。
もちろん、土地を持たない分金を持つようになるのだとか、全体のフローが増えるから税収も増えるので別にいいのだという反論もあろうが、しかし相続税100%であれば、土地どころか金も持たないだろうし(おじいちゃんからのお年玉が10万円なんて日も来るのかもしれない)、税収だってどこまで増えるか不透明だろう。財源のほとんどを死人に依存する制度というのは、ちょっと脆すぎるのではないだろか。

もっと法的に、「相続」というものとの関係で

また、法的な観点から見ると、遺留分はどうするのか、相続財産がマイナスの場合(あるいは遺産があるが債務もある場合)の扱いはどうするのか等、従来の相続人や相続債権者の保護についての問題が第一に挙げられる。名義は相続人のものでも、潜在的には他人のもの、なんてことも多々あるのである。まあ国家を相続人と見立てれば従来の規定を使えないこともないが、それで実際に制度が動くかどうかは別問題である。
また、例えば法人なんかを作って、そこに不動産を移譲し、自分達は家族共同の賃借権を当該不動産に設定すれば、100%相続税を逃れることもできそうではある。(不動産に限らず、そういう「名目的に所有権を移して貸す」ビジネスが流行るかもしれない。)タンス預金にされちゃあ相続の対象にもならないし、そもそも家族の財産なんてそれほどきちんと分けられているものだろうか。
法的に、相続というのは、「団体財産の管理者の交代」(ゲルマン法起源)と、「遺族の生活保障や死後の扶養」(ローマ法起源)の2つの意味を持つとされる(民法 7 親族・相続(有斐閣アルマ))。BI制度よりもより深く社会に根付く相続という制度を、新参のBI制度によって乱暴に掘り崩すのはいかがなものだろうか。


あと、誤解がないように言っておくと、この本でBIが扱われているのは本の一部に過ぎない。『弾言』自体は、小飼氏の人生全般にわたる生き方の哲学を、文字通り「弾言」した本で、全面的に賛成はできなくても、色々と刺激になる本なのであります。