『お金と英語の非常識な関係』〜英語で金は作れるが、金で英語は作れない

タイトルは、『ローマ人の物語』のいずこかから。上下2巻なので「今週の1冊」としてよいのか微妙だが、まあ特例、ということで。
著者である神田昌典氏は、経営コンサルタントになる以前に、上智大学国語学部→外務省→MBA2つ→米国家電メーカー日本代表という、いかにも「英語」な経歴を歩んでこられた人であり、そこで培った英語のノウハウがつまった1冊なのだろう、多分。
そんな神田氏が、1巻の冒頭で、彼が英語について隠してきた秘密を暴露している。「私は英語ができない。」、ってンなことあっていいものか*1。もちろん、本人も、この「秘密」が言い過ぎであるということを分かっているのだろう。MBAを2つも出ている人が、日本人の感覚で「英語ができない」はずがない。はずがないのだが、「日本人の感覚」ではない感覚からは、MBAを2校卒業した神田氏をしてこう言わしめる現状があるのだ*2
しかしそこで諦めては何事もなしえないわけで、むしろそこで諦めなかったからこそ今の神田氏の成功がある、というか、福沢諭吉から始まる文明開化の成功もあるのだ、だから勇気と気合で英語圏に殴りこめ、と、いうのが本書の主張。綺麗な英語を捨てて、ブレイブハートでアメリカビジネス界にデビューしよう、という神田氏の主張にも一理あるのはわかる。
だが同時に、その英語では神田昌典にはなれないのも事実だろう。
というのも、先程来から何度か言及しているように、神田氏は米国トップMBAの出身であるから、そもそも前から充分すぎるほどの「受験英語力」があった、ということになる。MBAへ行くだけの英語力がなくてもビジネスはできるんだ!というのが本書の主張でありおそらく一面の真理だが、一方、MBAへ行くことが中間目標としてある人には、あまり役に立つ主張ではない。無論、これは米国ロースクール志望である私の意見でもある。
ただ、この本が読み物として非常によくできているということは、認めねばならぬ事実だろう。上巻付属のCDや、下巻付録の情報源も有益であり、本の内容とあわせると、上下巻2700円も安く感じるぐらいである。神田ファン以外にもお勧めできる2冊ではある。

どうでもいいけど、アメリカでは日本人男性はモテないらしい。なんでも、日本人男性は売春ツアーに出かける変態民族だからだそうだ。この件に毎日新聞は関わっているのだろうか。私が留学してモテなかったら毎日新聞のせいにしてよいのか。
なお、この本の付属CDに触発されて、速聴メソッドを開発してしまった。開発というほど大げさなものでもないが。

*1:しかも30ポぐらいの活字まで使いよって。

*2:アメリカに留学できる英語力があっても、「蛍光灯」さえ英語でいえない、と言っていたのは誰だったか。